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2007/09/27

DMVとJR北海道

遅くなりましたがDMVに乗り、さらには「線路にバスを走らせろ「北の車両屋」奮闘記」(畑川剛毅著・朝日新書)を読み、といったところでちょっと感想です。

この本はよく出来てまして、プロジェクトXをアサヒテイストでまとめた感じです。つまり技術屋の苦心と実現を表現し、合わせて課題も率直に検討しているといった感じです。
よって当然にも、「なるほど」「へぇ」とうならされてしまうわけでもあるのですが、しかしそれだけで終わってはこのblogらしくないので(笑)さらに考えてみます。

詳細は本をお読みいただきたいのですが、結局、DMVは現状、どころかとっても近い将来でも、既存路線では使い物にならないと思われます。それでもここまで華々しく行っていること、さらには、現状でタイヤメーカーからまったく相手にされていない、レール接触部分のみ溝を変えたタイヤについて特許を取得していること、などから考えて、JR北海道の当面の真の狙いは、自社で使うことよりも他社他国にライセンス供与などしてそれで儲けようということなんじゃないでしょうか。
雪に弱いったって、雪が滅多に降らない地域ならそれは問題にならない。踏切検知ができないといっても、既存の第4種踏切なら問題にならないし、逆に新設路線ならまったく別の検知方式を、補助金とって設置することだって可能かもしれないわけで。

そしてこのことは、特許取得を先に行いまくっているトレイン・オン・トレインでより顕著だと思うわけです。実際問題として、北海道新幹線が札幌まで延びれば、これはJR北海道にとってかなり画期的な収益改善をもたらす(収益はもたらさなくても劇的に改善される可能性が高い)わけですが、その一方で函館-長万部の並行在来線問題、ある意味国策に直結している問題がネックとなります。これを解決するToTが実用化されれば、みんながナットクして税金が投入されるかもしれないし、他国にShinkansenを輸出する際にオプションで売り込めるかもしれないし、と、直接儲からなくてもいろいろビジネスチャンスが広がると思うんですよね。

まぁそれもこれも、民営化というよりは分割なんてことをした弊害。およそ本業でお金が得られない会社を作っちゃった以上、その会社があらゆる付帯ビジネスを考えるのは当然といえば当然なので、DMVで煽るのを単純に非難できる構造でもないなぁ、という気はします。怒るべきは分割民営化そのものだと。

ほか、本を読んでわかったこと。
車両の揺れですが、これは本を読んで、板バネを使っているからだとわかりました。既存のマイクロバスをリバースエンジニアリングで改造していること、車検を通すためにできるだけ自重を軽くすることが関係しています。なるほど、だから鉄路ではトロッコ的な乗り心地になるし、道路では普通のマイクロバスよりはるかに鉄道的な硬い揺れになるのだなぁと。

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Re: DMVとJR北海道

ご提示の本を読まずに書くのは気が引けるのですが。
DMVはバスと比べて何が有利なのか私には疑問です。
既存の鉄道車両より価格が安いと言われてますが、
バスよりは高いと思います。

あとJR北海道の道路&鉄道両用車は世界初、というのはどう見ても納得出来ません。
戦前の英国でも線路走るバスがあったし、世界の他の国にもあったと思います。
過疎地の公共交通が死活問題の時に何故 "線路" にこだわるのか不明です。

From : 鈴木光太郎 @ 2007-09-28 00:52:12 編集

Re: DMVとJR北海道

>バスよりは高いと思います。
まったくそのとおりです。本文ではそのあたり、それ自体が本題と矛盾していることには触れられてませんが(まるでアサヒw)多少書かれていて、そもそもの開発動機が「ローカル鉄道線の車両費用、メンテナンス費用を抑えたい」というところなのです。だから鉄道車両より安いことだけでもメリットになるという計算になっています。
イギリスやドイツの話は本の中で詳しく紹介されていますし、私が当日もらったパンフにも触れられていました。こちらも例によって、そのことと「世界初」とが矛盾していることはスルーですが。笑
線路にこだわるのは、JR北海道が鉄道会社なので、ローカル線を廃止することが企業イメージ上致命的だ、ということが半分、あと今のJR北海道の最高幹部が技術畑出身で「てめーがつくってきたものを壊したくない」という純粋な技術屋魂半分かなぁという印象です。

From : いずみ @ 2007-09-28 03:20:58 編集

筆者です

 「線路にバスを走らせろ」の筆者です。
 改造を施しているのにベース車のバスより安くなるはずがありません。両用に意味を見いだしている(意味を見いだすこと自体が無駄というなら仕方ありませんが)のに、バスより高いと指摘されてもなあ、というのが感想です。「それ自体が本題と矛盾していることには触れられていませんが(まるでアサヒw)」とはどういう意味なのでしょうか。私は本書の中で、現行の鉄道車両より相当程度安いと主張しているだけですが。
 なぜバスより高いものを導入してまで線路に拘るのか、廃線してバス転換した方が安上がりではないかという議論について。企業イメージ上致命的という以上に「どんな形であれ黒字を出している鉄道会社は、廃線という選択肢を事実上持ち得ない(ごく短い盲腸線のような路線は除くとしても)、少なくとも自らは廃線を言い出せない、という認識を経営陣が持っているから」だと思います。
 一点、分からない部分があるので教えて下さい。「ToTが実用化されれば、みんながナットクして税金が投入されるかもしれない」とはどういう意味でしょうか

From : 畑川 剛毅 @ 2007-10-16 23:11:58 編集

Re: DMVとJR北海道

こんな場末でアクセスほとんどないblogにお越しいただき恐縮です。ただいま私は立山砂防軌道に向かっておりましてそちらに集中しておりますので、お返事はあさってにさせていただきますがご容赦くださいませm(_ _)m

From : いずみ@寝台特急北陸B寝台個室 @ 2007-10-16 23:26:32 編集

Re: DMVとJR北海道

2点この場にて付け加えます。
まず ToT とは顔文字ではなく「トレイン?オン?トレイン」の略称です。
あと私はフリーター全般労組の組合員なのですが、このところの朝日の右傾化(ひだりではなくみぎです)を深く憂慮しています。というか憂慮すらしてないか…そういう立場性であるということは、このblogのレトリックにフィルタをかけてお読みいただく上でご参考いただければ存外です。

From : いずみ@寝台特急北陸B寝台個室 @ 2007-10-16 23:35:50 編集

Re: DMVとJR北海道

すみません、まだ仕事先にて仕事中のため、今日中にお返事できません。終電までには退勤しますので今夜中にはお返事いたします。

From : いずみ@仕事先 @ 2007-10-18 22:56:08 編集

Re: DMVとJR北海道

帰宅しましたのでお返事を書かせていただきます。
本書は、マニアな「鉄道残し至上主義」とは無縁で、多角的な分析が志向されていると認識しています。であればこそ(あるいはそう読めてしまう本書に期待してしまう内容として)、「バスのほうが安いじゃないですか」という当然の疑問に、本書はきちんと答えられているのか? 私にはそれがきちんと書かれている部分が皆無に思えました。なお「本題」という語を吟味せずに不用意に使ってしまいましたが、本のタイトルという意味ではなく「主題」の意です。
「まるでアサヒw)」とは、結論誘導型の緻密でない論理構造を指すレトリックです。いうまでもなく、この部分は純粋に私の主観です。
次に、これは世界観の違いでしょうが、「黒字の会社が自ら廃線を言い出せない」のはなぜか、というのはいくつか考えられますが、その中のかなり大きな理由は「企業イメージの低下」ではないか、と考えています。
最後にトレイン・オン・トレインですが、実用化にあたっては、JR貨物がこれを使用する料金をどうするか、接続部分の大掛かりな基地は誰がどんな資金で建設するのか、等々、これまでの並行在来線問題を大きく超える問題が発生します。「ナットクして税金」とは、それらコストが何らかの補助金で解決される可能性のことです。

From : いずみ @ 2007-10-19 01:09:02 編集

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